盛岡地方裁判所 昭和42年(行ウ)2号 判決 1967年12月26日
原告 村田長一
被告 岩手県久慈市長
訴訟代理人 青木康外 五名
主文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 <省略>
理由
被告は、原告が昭和四〇年六月三〇日に東京都中央区月島四丁目一一番一二号から岩手県久慈市長内町第一七地割六九番地の一へ転入した旨の住民票を作成したが、同年七月八日右住民票を職権で消除したこと、原告はこれを不服として、同年一一月八日被告に対し、異議申立をなしたところ、被告は同年一二月一六日付をもつて却下決定をなし、同月一九日その旨原告に通知したことは、いずれも当事者間に争いがなく、<証拠省略>によると原告は、本件訴の提起前である昭和四二年二月二四日東京都江東区長に対し、原告及びその家族の住所を岩手県久慈市長内町第一七地割六九番地の一より東京都江東区深川扇橋二丁目一〇番地に移転したものであるとして住民異動届をなし、同日同区長においてこれを受理し、同日原告らの住民票を作成の上、被告に対し、同年三月一一日到達の郵便はがきをもつて、被告作成の住民票を消除されたい旨の通知をなしたこと、および原告が、江東区長作成にかかる右住民票記載の住所に現に住所を有することを認めることができ、右認定に反する証拠はない。
そうとすると、本件消除にかかる住民票が、仮に消除されずに現存したとしても、被告は、江東区長の右通知を受理した以上、結局職権により本件住民票を消除しなければならない訳である。そして、江東区長の右通知により、本件消除の効果が右のように無意味となつた後において、なお、原告が本件消除の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有するとの点については、原告は何らの主張をしないし、また、これを認めるに足る資料は存しない。したがつて、住民票の消除の取消しを求める本件訴は、その利益を欠くものであつて、不適法であるといわなければならない。
よつて、原告の本件訴を却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訟訴法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 石川良雄 田辺康次 田口祐三)